「もっと沖にお進みください」
| 堺ブロックチーム コンニ・カランバ神父 ペトロが、漁業の経験からして、夜明けに魚を獲れないと思い、主の「沖に漕ぎ出して網を降ろしなさい」という言葉をすぐには飲み込まなかった。しかし、結局ペトロが考え直し「お言葉ですから」やってみようと主を信じ切って、沖に出た。その結果、網が破れそうになったほど沢山の魚が獲れた。今回は、この光景を日頃の生活に当てはめながら、自分を弁解しがちな信者の実情を探っていきたいのです。 今時、信者として感じる最も深刻な問題は、私達の言行不一致です。つまり、信仰生活と日常生活が解離してしまっている事です。どうして信者の信仰生活と社会生活の深いギャップを埋めることができないだろうか。どうしていつも世間の考えに惑わされて、信仰者の立場から物事を判断する事ができないだろうか。どうして受洗したにも関わらず、その恵みを無駄にし続け、異端者のように振る舞っているのだろうか。聖書の話、教会の教義に対して、「それは、理想だ、できたらいいよね、でも、現実問題として、今の私にはできない。」そんな思いに囚われていないだろうか。 私が、結論から言わせると、それは、信者の多くは世俗の相対主義に振り回されているばかりか、なかなか謙虚にならず、主の呼び掛けを無視し、沖に進もうとはしないからと思う。勿論、褒められるべき信心深く親切などに満ちた信者も沢山いらっしゃる。これを否定しかねる。しかし、自己反省する余地がなく、今の私はいいと言い張る人も少なくない。実を言うといい加減な信仰に囚われている限り、謙遜な道を開かれた主イエスの跡を辿る事は非常に難しい。 さて、私達が、表裏なく一日24時間、信者らしく歩み続ける為に何が必要かというと、それはもっと沖に進む事だろう。いつも自分の行う言動が神のご意志に適っているのかどうかを識別する必要がある。その為に、やはり神と向き合い、神に捧げるはずの時間、ミサや黙想会などを商売に使ったり、悪用するよりは、これまで一層大切にしてゆくのです。日本では「親の背中を見て子は育つ」と言われるが、逆に“私の背中”を見て育てられない人が多いのではないか。 「私達は完全な者ではないから、そう言われても…」とよく耳にする。確かに、人間は不完全な生き物で、神の価値観と自分の価値観が実生活の中で一致できないのは事実です。しかしだからといって、これを口実にして、愛の掟を軽視し、信者として優れた人生の目標、「完全な者になりなさい」を求めずに生きるのなら信仰も愛も育たない。というのも、世間の悪い癖に拘る事から日々の生活にキリスト教美徳を反映する事に転換しなければ信仰が成長できない。 皆が国民の絆を訴える一方、プライバシーを尊重するという仮面に覆われて、実際に冷淡で無関心な社会を築いていく一方では矛盾を感じる。最近増加している孤独死や家族葬などが正にその利己主義の典型です。残念だがそれに振り回されてしまう信者もいる。 以上述べたことからもお分かりのように、いつも自分の都合のいいように物事を見、人間性・風習を言い訳にしたりする限り、いつまで経っても進歩できない。しかし、主の「お言葉ですから」、主の「お支え」があるからこそ、私はできる範囲で沖に出て網を打ってみたいと考えるようになれば、人生に豊かな実を結ぶに違いない。信仰に忠実に生きる事、赦す事の難しい今の世にあってこそ、私達が先頭に立ち、信者の強い愛の絆を証しするチャンスではないだろうか。あなたも自分の殻に閉じこもらずに沖にお進みください。 |