死者の月に思うこと
| 堺ブロック司祭 高野 利雄 長い間、懸案であった堺ブロック共同墓地が大阪市施設南霊園の大阪カトリック墓地内に決定されたことは、喜ばしいことである。 墓地は死者と生者とが向き合う場所だけではなく、長い過去と未来につながりとして連続している。これまで、関わってくださった多くの恩人たちの死は、どうなっているのかといつも、原爆（昭和20年）の場から思い続けて、今日に至っている。 やがて、遅かれ、早かれ、身体的、機能的、医学的にも、苦悩のうちに、人間は行き着くところに、たどりつくのである。死の悲しみを痛むのは、愛する人と関わりを抱いている人との別れである。 その人のいのちの肉体的なものは消え失せていても、人は自然に手を合わせて、その冥福を祈っている。いのちの次元に対する“慎みのこころ”である。その慎みの心は、死の中にも、目に見えないいのちの摂理に気づき、涙のうちにも感謝と希望を抱いている。 そういう気持ちを表現しているのが、詩編の祈りである。 “谷がわの水を求めて” 詩23 “神のはからいは、限りなく” 詩139、その他 時代、場所、文化は異なっていても、人の心は本質的に同じであることである。 特に、心の奥深くに愛され、安らかにあることを求めている。それは誕生と同時に、人間の存在に植え付けられている根源的感覚である。目に見えないいのちの摂理の領域の中のことである。 しかし、現実には心の闇の感情のもとに、自己中心的、利己的、他と比較し優位に競争し、地域社会において争いが絶えない。そういう闇の現実を、いつまでも放置しない神がいることを聖書の歴史予言と福音が告げている。苦難の中にある人々に対して、希望、救い、癒しを与えることによって、人格的に成熟した人になることによって、周辺の人々に救いの癒しになることを教えている。神の壮大な計画や目的があることである。この人間存在の本来のいのちの道、真理としての光のイエスである。神のうちに生まれ、神のうちの死に、神のもとに帰ったイエスこそ、わたくしたちのあるべき姿であると、ヨハネ福音は告げている。 死に運命づけられた人間のいのちが永遠の生命の交わりに生き、愛されていることの自分をみつめ、先に召された恩人たちの安らぎの展望に気づかされるのは、イエスとの接点として感謝のミサである。聖体のキリストの体に交わることによって、救いの本質面をすべて自分でも生きてゆくのである。理屈や思想的に集まるのではなく、何かわたしたちを一つに結ぶ、目にみえないいのちの摂理の存在があるからである。 |