「心に納めて，思い巡らす」  堺ブロックチーム シスター中西美繪 明けましておめでとうございます。 主イエス・キリストのご降誕から八日目，新しい年2016年を「神の母聖マリア」の祭日で始められるのは本当にうれしいことです。「神の母聖マリア」―これは，キリスト教会が始まって以来，最初にマリアに与えた称号で，４世紀の初めには，もうマリアを「神の母」と呼んでいたそうです。431年のエフェソ公会議で正式に「神の母」と宣言されました。マリアが「神の母」と呼ばれるのは，神の御子イエスがマリアから生まれることによって，マリアと同じ人間性をとられたからであり，マリアは神である御子に人間性を与えた方だからです。 マリアには救い主としてのイエスの使命に，自分も深く一致するという母の姿があります。 聖マリアを想うとき，いつも私が懐かしく思い出す聖母子像があります。それは北海道の当別トラピスト修道院・灯台の聖母修道院のチャペルで出会った聖母子像です。貫頭衣のような素朴な半袖の衣服をまとい，御子イエスを両手で抱いて私たちに示しておられる若い母親としてのマリアの姿です。船越桂氏によるこの聖母子像には，中世の名画に見られるような神々しさはありませんが，市井に生きる小さな人の美しさと優しさと強さがあり，人々のただ中で希望を生きられたマリアの姿を伝えているようで，私はとても好きなのです。 「神の母聖マリア」の祭日の聖書朗読はクリスマスの夜の出来事を伝えています。幼子イエスについて告げられたことを，羊飼いたちから聞いた人たちは皆驚きました。しかし「マリアは，これらのことをすべて心に納め，思い巡ら」されました。他の人たちは，不思議な話だなぁ，と思ってすぐに忘れてしまったかも知れませんが，マリアはしっかりと心に刻みつけ，何度も思い出しては，その出来事の意味を考えられたのです。マリアは，出来事の中に込められた神のメッセージを聞き取ろうとして，生涯心に温め続けておられました。 すべてを理解できる日が必ず来ると信じて，神に聞き続けておられたのです。出来事に込められたメッセージには，厳しいものもあります。時には，まったく理解できないようなメッセージもあります。マリアに起こった出来事はまったく思いも寄らぬ理解できないことばかりでした。しかし，マリアはそれらの出来事の中にも，神の愛のメッセージが隠れていることを信じ，それを聞き取ろうとなさいました。だからこそ，マリアは最後までわが子イエスの十字架のもとに踏み留まることがおできになったのだと思います。 この世に生きる私たちの悲しみも，喜びも，すべて味わわれた御母が私の母となって，常に寄り添っていてくださるのですから，目の前の状況に囚われて思い煩うのではなく，神に希望し，神に聴きながら，「心に納めて，思い巡らす」ことを倣いたいと思います。 新しい年を迎えた私たちが，どんな不条理な日常の出来事の中にも，必ず神の愛のメッセージが隠れていることを信じて，一日一日を，聖母マリアに倣って，信仰と希望をもって歩んでゆくことができますよう，お互いのために祈る一年でありますように。 |