| 金剛教会信徒 前田 静 我々人間はこの地上で、多くの悪のなかで暮らしている。テロや内戦、家庭内暴力や子供の虐待など、また日常的にあからさまな、あるいは隠された悪意のなかで暮らしている。それら悪を我々人間は憎むだろうか。おそらく憎むだろう。憎むという感情もまた「悪」として、我々を苦しめるだろう。あまりにも人間的な悪というものの本質を我々人間の進化の一つとして論じたオーストリアの学者がいたが、悪もまた人間が生き延びるための進化の一形態というのだ。 神はこの悪をどのように眺めておられるだろう。神は人間の自由とその選択を我々に許された。人間の進化もまた、我々人間の歩みとして見ていらっしゃる。人間は自ら生き延びるために、あるいは自分の幸福のために努力する。その努力が他人の生命を脅かしたり、利害が衝突することもある。自己防衛の本能が必然的に悪を生み出すことも多い。いや、それが全てといってもいいだろう。これら、あまりにも自己保全の生き方を神はどのように見ておられるのだろう。 テロや子供を殺す親を神は愛しておられると言えば、我々は苦しむだろうし、受け入れがたいであろうが、愛と許しが神の本質であるからには、これら我々の苦悩のすべてを愛しておられるに違いない。我らの外にある悪も内にある悪も、そこで我々が苦しみ、戦い、自らを浄化する我々の営みの全てを愛しておられるに違いない。そう考えれば、悪に身をゆだねるのも、そこにある悪に、またわが内にあるに気づくのも、そしてその悪から自由になるのも、我々自身の生きる道なのだろう。神は悪をも許し、愛していらっしゃると知っていればこの世界を見るとき、どれほど、悲しくもまた慈愛に満ちたものにものになるだろうか。自分の頼りなげな歩みも、またそばを行く人の歩みも暖かな光に包まれているだろう |